桐生模型学校 その9 - 就職活動編 ホビー業界で働くには

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ホビーショップを開業・起業する前に ーホビー業界に就職するー

「自分の趣味を仕事にしたい」という気持ちは誰でも持っているでしょう。「ホビーショップ」を開業するという趣旨から少々視点がずれますが今回は「ホビー業界に就職」するというテーマで書いていきます。自分の知識や技量に絶大な自信があったり、商売として確実に成功する、あるいはもうホビーショップを開業あるいは起業すると決めた方には不要ですがこれからホビー業界に関わりたいという人の大半は自分の知識と技量で今後やっているのかという不安を持っていると思います。今回は開業・起業前に別の会社で働いて経験を積んでみようという方向けの内容になります。結果としてそのままずっと働くというのもありですけどね。

実際に「ホビー業界 就職」「ホビー業界 求人」や「ホビーショップ 開業」「ホビーショップ 起業」でというワードネット検索しても得体のしれないフランチャイズ広告がでたりするのであてになりません。

ではどのようにすればホビー業界の会社に就職できるのかとなるとバンダイ、タカラトミーなどの上場企業を除くとホビー業界の求人は不明瞭です。ホビー業界に関わる会社にはどんなものがあるのかという点から見ていきます。
※玩具業界については割愛します。

ホビー会社の分類その1 ーメーカー(販売元)ー

ホビー業界に関わる会社にはいろいろなところがありますが大きく下記のように分類されます

メーカー(販売元)
プラモデル・鉄道模型やフィギュアといった製品を製造する会社。具体的にはバンダイ、タカラトミーといった玩具・ホビー全般を製造するメーカーから個人で造形・製造を行う中小企業まで様々です。ただメーカーといっても実際に設計・製造は別の会社にお願いするところも多く存在します。プラモデルの製造過程は簡単に企画・設計・金型製作・射出・パッケージング・販売の流れをとります。かつてはこれらをすべてメーカーが行っていましたが中国で金型を製造することも多くなり、実質メーカーで行うのは企画と販売で製造は海外へ外注へだすため品質管理という別の業務が付随する傾向にあります。フィギュアの場合は国内生産はほぼ皆無ですからなおさらです。

メーカーで経験を積みたいという方は将来、ショップではなくメーカーとして起業したいと方と思います。他の業界でもそうですが経験のない一般人が仮にメーカーに就職すると多くは営業に配置されるのではないでしょうか?商品の企画や設計をやりたいと思ってみたら違う業務を任されたという可能性は極めて高いでしょう。バンダイやタカラトミーといった上場企業の場合は待遇も悪くないせいかあまり独立したという話しは聞きません。これら大手企業の仕事内容を簡単に知るには下記の本がおすすめです。

田中圭一 著 「サラリーマン 田中K一がゆく!」

玩具メーカー「ヨイコトーイ」(どうみてもタ〇ラ)に勤務する田中が営業マンとして奮起するストーリー。面白おかしく書いていますが内容は玩具メーカー営業の実態がわかりやすくなっています。玩具メーカーなので多少の違いはありますがホビーも大なり小なり同じと思って問題はないかと。

大企業ですと「営業」が主な業務と思いますが中小企業であれば一人でなんでもやらされるという面がありますのでその会社の製品やスタンスに共感がもてるのであれば中小企業を狙う手もあります。中小企業にいた方が独立するというのは絶対数は少ないですが意外とある話しです。ただ常時求人をしているわけではないので注意が必要です。

ホビー会社の分類その2 ーメーカー(協力会社)ー

メディアワークス クルマのプラモより

メーカー(協力会社)
会社名はでていませんがホビー商品製造にかかわる会社はたくさんあります。特に設計、金型製造、射出など商品の根幹にかかわる会社も存在します。たとえば金型製造でいえば

秋東精工
 プラモデルの設計・金型製造をおこなう。ガンプラを製造していることでも有名ですがかかわったメーカーは数知れず。

設計では
T-REX(株式会社ティーレックス)
 「やまと」のマクロスシリーズのCAD設計など。3D-CADによる高度な設計が有名。フォーブスジャパンでも紹介されていますね。(記事はこちら

これらの特徴は設計・開発・製造に重点があるため「営業」というものより技術職がより強くなります。よってCADデザインができるなどの技量が伴っていないと就職できないところも多いかもしれません。会社にもよりますがホビー一筋ではないためあまりにもプラモデル愛・ガンプラ大好きみたいな人物をあえて避けるとも。採用に関しては実際そのように言った金型会社の社長がいました。パッケージ・取説などその他にも実はホビー業界に関わっているという会社はたくさんあります。

将来メーカーとして独立したいという場合はメーカーへの就職は製造にかかわる取引先や販路の開拓、版権取得などの実務経験が武器になるので有益と思います。その反面、業務が一般消費者への販売という側面が弱いためホビーショップや模型店を開業したいという方には向かないでしょう。メーカーとして独立するとなる一般的なロードマップは技量を磨きながらワンダーフェスティバルなどへの出展で実績を積むという流れかもしれません。

ホビー会社の分類その3 ー問屋ー

模型問屋ブンカの広告

問屋とはメーカーから商品を仕入して販売店に卸す会社です。模型問屋については「桐生模型学校 その4 - 模型・プラモデル問屋からの仕入れ」の「ホビー業界おすすめ模型問屋5社」でも紹介していますのでこちらを参照してください。いまでこそ模型問屋の数も減り、問屋不要論まででてきますが業界的になくなることはないと思われます。ホビー業界の中では一番業界の中を横断することになるのであとでつぶしがきくかもしれません。実際に問屋間で転職したり、メーカーへ移籍、あるいはホビーショップに移ったりとホビー業界のあらゆるところには問屋出身者は多いですね。かつては問屋がメーカーの生産量を決定させたり、販売店の後継者を就職させ、修行して送りだしたりと精力的な存在ではありましたが問屋自体の統廃合がすすみ会社数も限られています。

模型問屋での勤務経験の最大の利点はメーカーならびに販売店との取引があるため人脈を構築しやすい立場にあります。また問屋の業務はメーカーの仕入、販売店の担当、発送業務と一人で多岐にわたり、分業化がすすんでいないことから比較的経験値が積みやすい現場であるともいえます。昨今、問屋の中でも業務の分業化がすすんでいますので発送業務だけの求人という傾向もありますので求人があった場合は注意が必要です。現在は「問屋」から「物流」へシフトしている移行期ではないかと思います。

問屋のマイナス要因は最初は正社員ではなくアルバイト、契約社員という雇用形態をとるようなので一般的な就職としては敬遠されがちです。ただ将来独立するという方には向いているかもしれません。なにせホビーショップを開店させるのであれば今後とも付き合いが発生しますので退職時にトラブルになることは避けなければならないからです。

ホビー会社の分類その4 ー販売店ー

将来、販売店を開くのであれば販売店での経験が一番手っ取り早いかもしれません。昔はイエローサブマリン出身者という肩書を持つ方が結構しましたがいまはアニメイトやコトブキヤといったアニメショップ出身者になっているかもしれません。販売・接客、仕入、陳列、イベント開催など幅が広い店舗業務に携わります。販売店の規模にもよりますが取り扱いジャンルも多く覚えることが圧倒的に多い形態です。1-2年も経験を積めばホビー業界の事情は把握できると思います。ただ店舗の場合、求人の大半はレジと陳列になるかため仕入を任されるのにどのぐらいかかるかはその店舗次第になってしまいます。幅広い業務経験を積みたいと思っても店舗が小さいと求人そのものがなく、大きすぎると分業化されすぎるので経験値がつめないという状態になってしまいます。それと店舗数がすくないので求人自体をさがすのが大変かもしれません。求人をみかけたらすぐに聞いてみるのが一番と思います。店舗側の視点にたって採用する人物を見た場合、多くの応募者は「自分の趣味を生かして、楽に仕事ができる」とか「自分の知識をもっと店舗で生かしたい」といきこんでくる方が多いのですがこのような方はむしろ敬遠されます。短期的にはある特定分野に詳しいので即戦力になるのですが長期的には自分のやり方に固執して意見を聞かなくなる方が多いからです。それと興味のない分野を覚えようとしないという特徴もあります。よってある程度の知識があって(つまりホビー分野への素養)店舗、あるいは会社の方針にそって成長してくれるほうが採用したい人物になります。将来ホビーショップを開業するため経験を積みたいという方は店舗側からすれば働いてもらいたい人物と思います。(将来独立ということを実際言うかは別問題なので注意しましょう)

近年、ホビーショップとは別の業種、リサイクル店もホビーを扱う店が増えてきました。いやリサイクルショップのみならず家電販売店(ヤマダ、コジマ、エディオン、ヨドバシなど)もあります。ただホビー部門で仕事ができるかどうか不明。その中でもジョーシンスーパーキッズランドは家電量販店の中でもホビーに特化し、ホビー向けのスタッフがそろっているショップです。そういうところなら確実に経験値を積めるかもしれません。

もうひとつの潮流としてインターネット通販があげられます。ネット通販の場合、実店舗はないケースもあるため業務内容の大半は商品マスタの作成と発送業務になります。接客という業務経験はつめませんが仕入・販売の実務は経験できる可能性はあります。しかしネット通販は商品マスタ作成、仕入、企画、画像・映像制作、サイト管理・分析、ショッピングモール管理、カスタマー対応、メルマガ発行、物流(ピッキング、梱包、荷受、検品、配架)など各業務に細分化して業務配分を行いますので全体的な経験を積むのは難しいかもしれません。それでもネット通販は実店舗でも行っているところは多いので独立した際にネット通販もやりたいというのであれば有効かと思います。模型業務の経験というよりは通販事業の仕組みをしるという経験は詰めることでしょう。

ホビー会社の分類その5 ー輸入業者ー

輸入

メーカー、問屋との少々異なりますが海外から製品を輸入して販売している会社もあります。ホビー業界ですとタミヤがイタレリを輸入・販売、ハセガワがレベルを、と国内メーカーが海外製品の輸入を行う傾向がありますが輸入業務のみを行う会社もあります。

ビーバーコーポレーション
MS モデル
ウィリング
バウマン
プラッツ
国際貿易
ガリバー

※ボーネルンドやファーストアローなどミニカーや玩具も含めるともっと会社はあります。特定分野にかなり特化した会社になりますが問屋への卸や販売店への情報提供などは行いますのである程度の経験値は得られるでしょう。ただし輸入会社と同じ業務を独立して行うことはほぼ不可能です。理由は輸入ブランドが限られていて新規に卸をしてくれる海外メーカーを探すことが困難だからです。

ホビー会社の分類その6 ー出版社ー

出版社

ホビーに関わる出版社というと

・ホビージャパン
・アートボックス(販売は大日本絵画)
・モデルアート

の3誌がホビー業界でのメジャー出版社。その他にも新紀元社、グランドパワー、海人社、光人社などホビー向け雑誌を出版している会社やディアゴスティーニ、アシェットなどの分冊物を出版している会社もあります。メジャー3誌以外は純粋なホビー出版社ではないのでどうしてもホビーに関わりたいのであれば3誌からチョイスするしかありません。ホビージャパンも昔は学生ライターにバイトで作例を作らせていて学校を卒業すると退社という流れがありましたが今はそういう時代ではありません。雑誌編集、営業、広告などが主な業務になります。ホビーショップ開業という実務経験は詰めませんが他では得られない人脈をつくることは可能かもしれません。

まとめ

ホビー業界に関わる職業、会社は以外とたくさんあります。ホビーショップを開業するからといって経験値が必須かというとそうでもありません。他業種にお勤めしていたほうが視点がことなるので良い方向に向かうこともあります。商売の基本原則は大きく変わりませんのでまったく業界のことを知らなくても大丈夫です。

とはいいながらホビーショップを開業させるということはかなりの金銭的な面も含めてリスクがありますのでこれらの会社で働いてみて自分に合っているのか、やっていけるのかなどを確認することをおススメします。

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