桐生模型学校 その15 - 問屋のガンプラ転売問題 後編

前回は問屋がガンプラ転売をしているという問題についての疑問点を述べました。(前回の記事はこちら)今回は転売騒動で感じる疑問をメーカーであるバンダイ視点からみていこうと思います。転売という行為が法的に問題ないとしても道義的に問題があるという前提ですすめていきますが一般に流通する商品を小売店ないしは問屋が助長しているのではないか、あるいは真偽はともかく転売しているといわれて納得するという業態事態が異常だと思われます。

ホビー業界における転売の構図についてはすでに「桐生模型学校 その6 - 転売の構図と転売屋への対応」で述べましたが昔からすくなからずそのような行為は行われていたと推測できます。そういう観点からみてもホビー業界ではある程度の転売は行われてしまうということは暗黙の了解なのです。ただここ最近の品不足はメーカーの思惑をかなりこえた事態であると思われます。どの程度まで解消できるかは不明ですが商品が潤沢に供給されれば問題は解決しますし、流通業者(問屋・小売店)や消費者のモラルだけに頼って解決できる問題ではありません。他のホビー商材ではおきないガンプラ転売騒動を解決できるのはメーカーであるバンダイしかないのですがなかなか難しいかもしれません。

バンダイがガンプラ転売騒動を収束できない9つの理由

すでにバンダイがガンプラ増産を公式に発表して転売問題は解決するといわれている向きもありますが長年バンダイ商品を扱っている方は素直に信じてはいないのではないでしょうか?バンダイ公式見解を疑ってしまう要因を述べていきたいと思います。

生産設備の増強へのリスク

このブームが一過性のものであると考えるなら生産設備の増強はリスクが大きすぎます。ここまでバンダイのガンプラが消費されるのは2000年代にはいってからで特にSEED以降ではないかと思います。初期のガンプラブーム(1980年代)が収束してガンプラはかなりの期間低迷します。HGでリニューアルされたり、MGなどの商品で市場規模が少しずつ大きくなりますがあくまでもガンプラは日本市場のみ、かつ一部の層向けのカテゴリーでした。それが今やメーカーの技術開発や営業努力、そしてガンダムというコンテンツを育成した結果、2006年に年間出荷数は722万個、2019年には3126万個を出荷するようになっています。(引用 バンダイニュースリリース

生産設備への投資は現在の需要だけで判断できるものではないため慎重にならざるを得ないのは当然のことです。公式発表でガンプラ生産量を増強しますといっていますが簡単に外注にだせるものではないためその生産量を増やすという根拠がかなり不透明と思われます。

商品点数が多すぎる

うれしいことですが一部商品を除きガンプラは絶版にはしません。逆にいえばたいていの商品はいずれ生産されるということです。しかしながらアイテム数が多すぎてすべてを一度に生産することは不可能です。2015年時点でガンプラの種類は2000品目を超えていました。これらすべてを常時在庫することはできませんのでどこかのタイミングで在庫がなくなることは容易に想像できます。在庫がない状態がある限り、転売というのはすくなからずおきてしまいます。

バンダイが在庫をもたない

バンダイの流通スタイルとして生産された商品の在庫をもたないというのが他メーカーと異なることかもしれません。つまり在庫をもつのは問屋や小売店となります。メーカーが在庫をもつと問屋が在庫をもたなくなるのでなんともいえませんがタミヤなど他のメーカーに比べると発売後の対応に柔軟性を欠くケースも生じます。

売上の海外比率が高い

ガンプラの海外比率は今や50%を超えているとのこと。もともとガンプラは海外ではあまり人気がなく他の日本アニメキャラクター、マジンガーZやグレンダイザー、マクロス、トランスフォーマーなどのほうが圧倒的に人気がありました。その後ガンダムWが海外で放映されたり、地道な営業努力が実った結果と思われます。

ガンプラを海外に広めようという動きは当然、国内市場は縮小していくという危機感から生まれたものであり今後海外に活路を求めるのは必然の流れになります。今までのように国内が主で海外はついでというわけにはいかなくなりますので国内の供給は海外との配分に左右されるのは必須です。しかも現在、海外の市場はアジアが大半をしめていますので北米・欧米にはまだ開拓する市場があることを思えば国内比率は今後も低くなっていくことは当然となります。

プレミアムバンダイ・ガンダムベースの存在

ガンプラベース公式サイトより

プレミアムバンダイ(通称プレバン)やガンダムベースなど直営の規模が年々大きくなっています。当然メーカー直営ですから最優先で数量を決定するはずです。通常商品の供給だけでなくこれらのプレバンやガンダムベース限定アイテムが他の生産のキャパを奪っているのはちょっと考えればわかると思います。これらの生産を品不足解消まで延期するぐらいしてくれればメーカーの取り組みへの本気度もわかるのですが難しいでしょうね。

発足当初から流通では当然ブーイングされていましたがコンテンツ全体を盛り上げるという効果はありますので直営店舗はありだと思います。しかし限定品のオンパレードが少々あおりすぎだと感じてしまいます。

バンダイはおもちゃメーカーである点

バンダイはあくまでもおもちゃメーカーであり、プラモデルはその一部門にすぎません。決算報告ではトイホビー部門と昔でいうボーイズ事業部とホビー事業部が一緒になっているのでわかりにくくなってしまいましたが男子玩具、つまり戦隊ヒーローや仮面ライダーが主力商品です。たとえば仮面ライダーの新番組が始まっておもちゃ屋にいっても仮面ライダーベルトは発売に買えることは少ないと思います。それが20年近くも解消されておりません。不足して商品を販売することが当たり前な業界なのです。

近年だと妖怪ウォッチの妖怪メダルでは商品発表会において「品不足でご迷惑をかけています」といいましたが事態の解消にはほど遠いものです。むろん増産はしたのでしょうけど需要を満たすことを原則することはしません。ちょっと足りないぐらいがちょうどいいというのが問屋・小売店をふくめた本音だと思います。

この点に関してはもうひとつ、「バンダイはボーイズ事業部が花形」といわれていました。最近は不明ですがボーイズ事業部にいくと出世コースでした。どの会社でも事業部に花形があるようにバンダイも当然あります。それはそのまま社内のヒエラルキーと直結する傾向がでてきます。

バンダイは昨対を重要視する

バンダイは昨年対比、つまり昨年度からどのぐらい伸びたかを重要視します。当然といえば当然ですがブームに依存しやすい玩具・ホビー業界にとってはいつも昨年度をうわまわることはかなり難しいことです。昨対にこだわると何がおきるのかというと、

  • 計画通りであれば機会損失をうけやすい体質となる(積極的に在庫リスクをおわなくなる)
     結果的に来年度のため売上を抑制することさえありうる
  • 3月年度末に発売の調整を行う
     販売が予定通りいかなければ発売の前倒し、昨対をクリアして入れば生産中止や延期などをする

がおきやすくなります。バンダイは上場会社ですから決算数値をよく見せる必要性があるのもうなずける話です。

バンダイ社員は異動がある

バンダイといえども当然会社ですから部署の異動はあります。ただしそれが数年後には必ず異動があると知っていたらどうでしょう?すべての方がそうとはいいませんが短期的な考えになってしまうケースは存在することでしょう。長期にわたって同じ部署にいる方もいらっしゃいますが少ない事例ではないでしょうか。転売問題のような事例の場合は根本的な生産・流通にかかわる必要もあり、時間を要するものなので長期的な考えができるスタッフがいないと難しいかと思われます。

バンダイはコンプアライアンスには厳しい

バンダイは法的な部分がグレーである場合は保留にすることが通例です。当たり前かもしれませんが上場会社なので法的に触れるようなことは一切してきません。そのかわり商品のセット販売だけだと独占禁止法に抵触するので少量ながら単品流通をさせるなどのギリギリを攻めてきたりはしますけど。

なのでスターウォーズプラモデルのように海外販売禁止とバンダイはいいますが実際に手をだせるのは一次問屋までで流通末端で制限するようなことはしてきません。

今回の問屋高額転売問題についても実際に取引をしていなければ公式見解は延べないと思いますし、仮にあったとしても契約書等での内容に不備がない限りは制裁はしないでしょう。間接的には何かする可能性は十分にありますが。

まとめ

ガンプラ転売騒動はしばらく続くものと思っています。理由としては

  • 構造的に転売しやすい業界の商品であること
  • メーカーが解決するにあたっての問題をかかえていること

が根本的な原因として存在します。公式見解として増産をいっているようですが業界内部では毎度のことなので期待している人は少ないのではないでしょうか。

「転売が品薄をつくるのではなく、品薄だから転売される」

ということがいわれていますので転売をやめさせるにはモラルや道徳ではなく商品を供給することが最大の課題であり、消費者がもっとも望んていることだと思います。ユーザーは適正価格で入手できれば問屋が転売しようが買い占めがおきても不満はないと思いますよ。

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