桐生模型学校 その2 - 模型・ホビー業界の流通背景

FreeX あげたゆきお氏のまほろさん

ホビー業界における流通 製造 - 問屋 -販売 の流れ 

 「さあはじまるザマスよ」(肝付兼太氏の声で)につづく適切な言葉を選びなさいといわれたら間違いなく「行くでがんす」の世代です。前回の記事(「模型店開業の実務基礎知識 その1 – 桐生模型学校オープン」)ではざっくりとした模型(ホビー)・玩具・雑貨の分類定義と仕入先となる問屋に問い合わせ・相談をする前の注意を述べました。2回目「模型店開業の実務基礎知識 その2」は他の物販業界とはことなり仕入問屋に初めて取引の相談に行くとなぜネガティブワードでお出迎えされるのかということを中心にしていきたいと思います。

一般的な流通図

 流通経路は上記の図のようにメーカーから問屋、販売店を経由して消費者に販売をするというスタイルです。あくまでも原則論としての図です。プレミアムバンダイのように中間流通を無視して消費者にダイレクトに販売することもありますし、消費者の中には定価で購入してプレミアム価格で販売をする消費者(いわゆる転売屋)なども存在や問屋の間で「仲間卸(なかまおろし」」といわれる2次問屋もあります。が、それは例外として扱います。原則論に立ち戻ると模型店・ホビーショップを開業しようと思ってメーカーに問い合わせをすると直接仕入れはできないといわれるはずです。応対してくれた方が親切なメーカーの担当者であれば問屋をいくつか紹介しれくれるかもしれませんがだいたいは話もきかずに「問屋にきいてください」となるでしょう。粘って問屋リストをFAXしてくれるぐらいが限界です。模型・ホビーの流通は「メーカー・問屋・販売店」の流通にのっとて商売をするということが暗黙の了解になっています。これをそれぞれの頭文字をとって「製・販・問(せいはんとん)」が確立しているなどと表現することもあります。

図をみたり説明を聞いても特別に模型業界が特殊と思われない方もいると思います。なぜなら流通経路はきわめてまっとうだからです。それぞれの業界に流通経路があり、それぞれが異なっていたとしても模型業界における特殊性をこれだけで生み出すわけではありません。特異なことはこの流通経路と業界内での力関係が完全に一致するというところにあります。

オンリーワン商品が並ぶ業界

 「ナンバーワンではなくオンリーワンになれ」というフレーズを聞いたことがあると思います。模型・ホビー・玩具の大半はすべからく「オンリーワン」商品です。例えば戦艦大和はスケールの違いはあれどもタミヤ、フジミ、アオシマ、ハセガワ、レベル、ピットロード、童友社、アリイ(マイクロエース)など各種メーカーから発売されています。さらにウッディージョー、トミーテック(タカラトミー)や休業したメーカーをふくめるとニチモ(日本模型)、オオタキ、マルサンなどがあります。スケールが同じであっても各メーカーに違いがありタミヤを買ったらピットロードはいらない(売れない)とはなりません。どの商品も代替物がないのです。ときにはミニ四駆はタミヤ、ガンプラはバンダイと版権によって守られるオンリーワン商材もあります。オンリーワン商品であることはメーカーにとっては都合の良い販売が確立できます。いいかえれば「営業しなくても売れる」、さらに誇大的表現をすればブランド戦略を展開できる点がポイントです。マルサンが日本で初めてプラモデルをつくった(といわれる)時は百貨店などにいって「売ってください」という営業をするのが大変だったという苦労話は昔となり現時点では流通経路にのせるだけで末端までいきわたるシステムとなっています。この点が流通で

「うちの商品を買って(仕入)ください」 とはならず
「いやなら買わなくてもいいですよ」というスタンスを生み出す土壌となります。

市場の狭さ

 玩具市場は別にしますが模型・ホビー・プラモデルの市場は極めて小さいものです。市場規模を金額換算するとプラモデル・フィギュアは1400億円という記事もありますがホビー問屋の最大手で年商150億円規模なのでどういう試算で1400億円としているのか疑問が残ります。メーカーが直接海外に販売する分などもいれてではないかと推測します。わかりやすく生産数で語るなら一般的なプラモデルのメーカーが発売できるかどうかの分岐は3000個といわれていました。(最近だとバリエーションをふくめて1万個というところもありました)10年近くに大ブームになったメガハウスのワンピース・フィギュアですら1万個ぐらいです。ちなみに3000個のラインはプラモデルの射出ではなく箱の印刷、印刷ロットが3000をこえると格段に安くなるからです。ニチモさんにお話しを聞いたときは何をやっても10万個は売れていたよという話しははるか彼方の昔話です。

 市場が狭いと新規参入が極めて難しい業界となり(つまり儲からない市場)、業界そのものが硬直化していきます。多少の新規参入があったとしてもメーカーや問屋はほぼかわりません。見本市(ホビーショー)でも半分自虐的に「いつもと同じメンバー」という冗談すら飛び交います。

 市場規模の狭さを販売店の視点から見ると商品選択の幅がせまくなることがあげられます。各メーカーの商品を扱わざるを得ないという状況になるわけです。一般的な食品や衣料品、雑貨などは各メーカー営業マンが店舗の棚スペースをいかに確保するかに重点をおきます。よって「うちの商品を買ってください」というスタンス。他メーカーの商品ではなく自社商品を置いてもらうことに躍起になるぐらい商材にあふれているわけです。最近のネットショップや特殊な専門店は例外として総合ホビーショップを目指すのであれば業界で扱う商品をどれだけ揃えられるかが「良いお店」となる基準となります。業界で入手できる商品をすべて扱う100%にいかに近づけるかということです。規模は違いますが書店ににているかもしれません。つまりメーカーが営業や販促をしなくても販売店から「買わせてください」という流れが上記の流通経路とあわせて必然的にできあがっているわけです。

市場のコントロール - 需要と供給 -

 硬直化したホビー流通とメーカー第1主義の業界であると次に行われるのがメーカーによる市場のコントロールです。つまり自分たちの商品の適正販売数をコントロールしはじめます。すべての商材をコントロールするわけではありませんがバンダイやフィギュアメーカーに顕著なやり方です。ガイアの夜明けで「バター不足の闇」の中にホクレン関係者の発言として

「消費者の心理としては、たくさんあったら焦って買わないですよね。ところが『なくなるぞ』となったら、いるのかいらないのかよく分からないけどとりあえず買っちゃいます」「そういう消費者心理ってありますよね。わかります?」

 と発言して炎上したケースがありますがホビーでは往々にしてある行為です。(ガイアの夜明けは一部だけを切り取ったようにもみえますが)メーカー側を擁護すれば販売店のいうとおりに数を納めたら売れないのでたたき売りされた。消費者の声をそのまま商品化したらまったく売れなかったという事例に事は欠きません。よく「〇〇を発売してくれたら自分は10個買うよ!」というヤツです。商品が足りないなら生産すればもっと売上があがるのでメーカーにとってもメリットがあるはずだと思う方もいると思いますがメーカーは生産過剰をもっとも忌み嫌います。

 メーカー・問屋・販売店は固定化された流通ながら疑心暗鬼もあって需要と供給をすべて把握していません。メーカーはどの店舗にどのくらいの数量がいったかは興味がなくあくまでも全体としてどのくらいの需要があるかで生産を計画します。計画が達成されれば不足していてもリスクは負いません。そして生産数は極秘事項となります。タモリ倶楽部で生産数はどのぐらいかときかれたプラモデルメーカーはすべて内緒にしましたね。

 バンダイのコレクターズ事業部の商品がまさにこれに該当します。予約解禁前にほぼすべての店舗に商品Aは3個、Bは12個などの割振りがメーカーから問屋に対して、問屋から店舗に対して行われます。定期的に品不足がおきるように仕向けられているため転売屋のかっこうの餌食となるわけです。マスクと違って規制もかかりませんし。

まとめ

 模型・ホビー業界の流通における特殊性は下記のようにまとめられます。

・メーカーの力が強大
  基本的には販売店は「買わせていただく、売らせていただく」スタンス(※言葉に出さなくても)
・問屋から仕入れる業界
  メーカー直は原則不可
  問屋も数が少ないので希望条件にあわなくても他所で仕入ができない
・定期的に品不足になる
  意図的にしろ、偶然にしろ定期的に品不足になる。よって希望数が仕入できないことが多々ある
  当然こういう商品ほどお客からの要望が殺到する

 以上が問屋へ模型店開業を相談、あるいは取引に行く前に頭に入れておいていく背景となります。

次回は問屋で相談する際の要件(掛率、支払いなど)を述べる予定です。

第3回目の講義へ続く - 桐生模型学校 その3 - 模型・ホビー業界の取引用語

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