新潮社「原節子の真実」石井妙子

新潮社「原節子の真実」石井妙子

昭和初期(昭和20~30年代)の日本映画を見る

最近会社でアクリル材を曲げる加工が多く、ひたすら熱線であたため直角に曲げる作業を多いときだと10時間。その間、手は使えませんが目、耳、頭は使えるのでこの時間を利用して映画をみることが多くなっています。場合によっては在宅で映画を見ながらの作業も。そこで以前から興味はあったが実際に見るとつらく、苦行だった昭和初期の日本映画をみることにしました。作業中、手は動かせないのでチャンネル変更ができないのがこの際はいい方向に作用したわけです。

それとある方から桐生にまつわるブログを紹介され、その記事にあった成瀬巳喜男監督「妻の心」高峰秀子・三船敏郎出演、1956年作がみたくなったのもきっかけのひとつです。結局、探したのですが映像は簡単に見つからず、いかんせん古い映画で需要がないとなかなかサブスクで簡単にみられません。ベティ稲田出演「舗道の囁き」1936年作と同様にいつかはみたい映画にラインナップが加わってしまいました。

藤田加奈子氏によるブログ(ホームぺージ
東京在住の方のようで桐生に関するものをいくつか書かれています。かなりの長文ですが読み応えがあります。この中の旧・日用帳

続・桐生遊覧日記:のこぎり屋根と成瀬巳喜男と南川潤。吾妻橋の夜。

に先ほどの映画の話しが記載されています。この映画のかわりに前から名前はよく聞くし、興味のあった小津安二郎をチョイスしてみました。というわけでこの先、桐生の話しはほとんどでてきませんのであしからず。

昔の女優は綺麗だった?

年をとったせいか昔の映画にでている女優をみると「こんな綺麗だったっけ」と思うことがしばしばおこるようになりました。例えば「キューポラのある街」の吉永小百合。初めてみるわけではないけどなんか前と印象が違うように感じます。成瀬巳喜男監督「銀座化粧」にでてくる香川京子などなど。映画はあまりみるほうではないので実はあまり俳優のことも詳しくはありませんので偏見なくみているつもりです。小津映画を見れば必然と原節子がでてくるわけですが実はよく知りませんでした。「動物のお医者さん」にでてくる漆原教授はブロマイドで持っているとか、「そばもん」にでてくる中浜紀子(原節子がモチーフ)程度の知識です。あとはひっそりと引退後、50年近く表にでないことが伝説となったぐらいでしょうか。

今回は小津安二郎監督「早春」「東京物語」の2本をみました。いわゆる「紀子三部作」の2つ。(あとひとつは「麦秋」、現在視聴中)

『東京物語 ニューデジタルリマスター』予告編

小津映画感想は別に機会にするとして原節子いいですね。かなり前置きが長くなりましたが原節子についてもっと調べようと桐生市立図書館で「原節子の真実」を借りたのでした。

原節子の生き方は時代が早すぎた

「原節子の真実」は本人のインタビューが皆無なので知人や証言からそのひととなりを推論を加えながら綴ったものです。生い立ちや時代背景があるにしても

・女優になりたくてなったわけではない
・主張すべきときは主張する
・マスコミ、映画会社へもはっきりと主張する
・俳優(女優)とは何かを常に意識し向上に余念がない
・名声を得ても地味で謙虚(特に後輩女優やスタッフへ)
・男性社会の映画界で奮闘

といった彼女の側面が垣間見え、いままでの芸能界に流布するようなイメージとは異なることが良く書かれています。もちろん否定的な側面もありますが常に前向きな姿勢は尊敬できます。またこの本は原節子を中心にかかれていますが戦前から戦後直後にかけての映画界の歴史としても面白い読み物かと思います。

最近ですと森喜朗元会長の女性に関する発言で今はあれだけたたかれていますが仕事上の女性の立場は戦後まもなくであれば想像に難くはありません。

大平VS市川 45秒ぐらいから

大平正芳元総理と市川房枝議員のやり取り。ご両人のことよりは発言を聞いていた周りの笑い声が現在との違いを感じます。現在なら笑い事では済まないでしょう。原節子は典型的な日本女性の役どころが多いのですが小津映画にかかれている原節子像は本人はあまりよく思っていないようですね。彼女自身が答える代表作に小津監督の映画はないというのも私がもっていた原節子イメージを崩してくれました。原節子=小津安二郎監督映画ではないということがよくわかる本でした。機会をみつけては他の監督の映画も見てみようと思います。

昔の映画や俳優が良く見えるようになったのは年をとっただけでなく桐生の町並みが昭和を彷彿とさせるのかもしれませんね。

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