桐生模型学校 その7 - 模型店開業にむけてホビーショーはいくべきか?
ホビーショーは3つある
結論から言えば模型店開業にあたり「ホビーショー」は行かなくても大丈夫です。お金と時間があれば行ったほうがいいかもしれませんが必須ではありません。その理由とホビーショーの仕組みを述べていきます。まず「ホビーショー」という見本市(あるいは展示会)は日本では3つ開催されています。
1.日本ホビーショー
主催 ー 一般社団法人 日本ホビー協会
開催日 ー 毎年4月
開催場所 ー 東京国際展示場(東京ビッグサイト)
公式サイト https://hobbyshow.jp
いわゆる手芸の見本市。ハンドメイドを軸に法人・個人を問わず出展が多い。ジャンルも刺繍、フェルト、粘土、ビーズ、塗料など多岐にわたります。来場者は圧倒的に女性。ジャンルによってばらつきはありますが幅広い年齢層から集まっていると思われます。雰囲気としては手芸メーカー主導のイベントのようにも感じます。サンフェルト、ハマナカ、日陶科学、パジコ、藤久、ルシアン、ブラザー、マルト長谷川、などが参加しております。
(手芸のほうの)ホビーショーはメーカー主導のイベントといいましたがエンドユーザーへのアピールが主目的であることとターゲットが女性であるためアットホームなイベントです。平日にもかかわらずメーカー主催の体験コーナーや即売には多くのお客様でにぎわってます。模型とは異なるジャンルなのでこのイベントについては割愛します。
2.静岡ホビーショー
主催 ー 静岡模型教材協同組合
開催日 ー 毎年5月
開催場所 ー ツインメッセ静岡
公式サイト https://www.hobby-shizuoka.com
毎年5月に静岡にて開催される模型の一大イベントのひとつ。静岡のプラモデルメーカーが中心になって開催されるイベントのため県をあげての開催であり、土日の一般公開日は多くのモデラーでにぎわう。ポスターに毎回パチモンロボットが表紙に登場するのも特徴。
3.全日本模型ホビーショー
主催 ー 日本プラモデル工業協同組合
開催日 ー 毎年10-11月ぐらい
開催場所 ー 東京国際展示場(東京ビッグサイト)
公式サイト https://hobbyshow.co.jp
静岡ホビーショーと比較するため東京ホビーショーと呼ばれることもある。一時期は会場手配を忘れたせいで数年は幕張メッセで開催されていた時期もありましたが近年は東京ビッグサイトに戻っています。静岡と比較すると出展メーカーが多く、自由度は高いように思えます。立地的に集客がしやすい反面、来場者にとっては日帰りコースになりやすい。県をあげたイベントの静岡ホビーショーと比較すると数ある見本市のひとつとなってしまうため見劣りしがちですがそんなことはありません。むしろタミヤが同時期に開催されるタミヤフェアに重きをおくため一部メーカーは意図的に非協力的な姿勢もみえてしまいます。
今回は「静岡ホビーショー」と「全日本ホビーショー」の2つを「ホビーショー」として説明していきます。
ホビーショーのシステム その1(業者日と一般公開日)
見本市は大きくエンドユーザー(消費者)向けと業者向け、つまりBtoCなのかBtoB、に分かれます。ホビーショーは業者日と一般公開日をもうけて両方に対応するようにしています。これから模型店を開業しようという人は業者日のほうが気なると思いますのでこちらを重点的に説明します。
業者日が一般公開日と大きく異なる点は主に2点。そしてこの2点はホビーショーの大きな特徴となります。
1.発注書を出す
2.模型問屋が集まっている
一般的な見本市はメーカー(あるいは問屋)が新規顧客を開拓する場であったり、新規商材のお披露目をすることが目的ですがホビーショー開催当日に発注書を出すのが目的の場であり、発注する小売店のために模型問屋があつまるという構図になっています。ということはすでに「模型問屋と取引がある」が前提になっているわけです。これが模型店を開業していない人が業者日にホビーショーにきても意味がない理由のひとつになります。そういう意味ではかなり閉鎖的な業界でイベント当日にいきなり来場して問屋に発注できるかというとかなり面倒なことになります。
すでに模型店を経営されているかたは模型問屋による「代行買い」で事前に発注書を問屋に送って代わりに発注書をだしてくれるため来場しない人もいます。
ホビーショーのシステム その2(発注書)
見本市の当日に発注するスタイルはホビーショーの特徴と思います。といっても当日商品をみて発注するわけではなくホビーショー開催のだいたい1か月前に発注書が問屋経由で模型店に送られて事前に発注書に書き込んでおくわけです。中には「承認券」と称して数が不足する商品は割振りが行われます。最近ではこの承認券が必要な商品も随分と減ったようですが・・・
この発注書の仕組みはメーカーの都合で生まれたものと聞いています。メーカーがプラモデルを作る際に必要な金型代の融資を金融機関にお願いするとき、ただ「売れますよ」では当然信用してくれませんので「これだけ注文が集まっていますよ」という証拠としてみせるためだったそうです。
今ではネット通販が主流になっていますのでこのホビーショーの注文書が問屋に届いた日が情報解禁日となり、一斉に予約受付がスタートします。最近では事前に情報をもらえるようになりましたが昔は一斉にデータ作成をしなければならず量が多いので大変でしたね。それでもタミヤは自社の営業マンから教えてもらったJ南電機が解禁前情報にリークしてしまい、今では一切事前情報をくれなくなっています。あいかわらずのメーカー主義、ワンマン主義を貫いております。
模型問屋はこの発注書の集計・提出、承認券の分配、メーカーへの自社在庫分の発注などのために来ています。よって新規の来場者に対応するというのはイレギュラー扱いになってしまいます。
ホビーショーのシステム その3(模型問屋)
模型問屋は業者日には問屋ブースをもうけています。(一般日は撤去されていてイベント会場になります)主に取引がある小売店などが訪れ、お弁当をもらってお昼を食べたりするブースにもなっています。広さはまちまちですがブース費用もかかりますので大きな問屋ほど大きなスペースをもっています。中は典型的な折り畳みテーブルとパイプ椅子がおかれて密談ができるような場所はほとんどありません(中には数か所作る問屋もあります)。ということは初めて来る人が今後の商談、取引量や価格(掛率)など核心をつくような話しは他社が隣にいる以上はほぼできなくなります。
問屋「今年の商品はどうですか?」
私「今年もパッとしないですねー。」
のような誰が聞いてもおかしくないような当たり障りのない会話になってしまいます。つまり問屋の来場目的が商談ではないのと他社がいるので話しがほぼできないという点が模型店開業にあたってホビーショーにきても意味がない二つ目の理由です。
まとめ
模型店開業にあたって事前に「ホビーショーに行く必要がない」といいましたが業界の雰囲気を知るなど情報面で役にたつこともあります。ただ必須かというとそうではなく開業後してからの重要度が増しますのであわてる必要はないでしょう。すでに問屋との取引もある程度の段階まできているのであれば各メーカー、問屋が集まりますので面識を作る場としては良いのかもしれません。
・静岡ホビーショーと全日本ホビーショーがある
・ホビーショーは発注書を出すことが目的
・問屋は発注書のためにきている
・新規商談はシステム上想定していないので困難(他の日にしたほうがお互い効率的)
ホビーショーはかなり業界の閉鎖システムなので業界の人以外には冷たく見えるかもしれません。ただ閉鎖的ゆえに取引がはじまればメリットが大きくなります。まだ開業していないのであれば旅行がてら程度に行かれることをおススメします。
いい忘れましたが業者日は取引がなくても当然のように受付をすませれば入場できますのでご安心を。