群馬県桐生市 空き家バンクは移住につかえるか?
空き家バンクとは?
空き家バンクとは地方公共団体が市民から空き家を募って利用を希望する人へ供給する制度である。その目的は移住定住の促進と空き家の解消です。
目次
桐生市空き家バンクの特徴 -空き家率の高さと物件数の多さー
空き家バンクは全国各地で行われていますが桐生市は空き家率の高さと空き家バンクの物件数が圧倒的に多いのが特徴です。
日本の空き家率 -全国平均13.6%(出典 総務省 平成30年住宅・土地統計調査 クリックするとPDFが開きます)
群馬県の空き家率 - 16.7%(平成25年の調査では13.6%)
桐生市の空き家率 - 20.8%(出典 桐生市サイト掲載の住宅の項目から算出)
※スマイティのサイトだと桐生市の空き家率は17.4%
群馬県で空き家バンクを行っている自治体と物件数は下記の通り
※2020年8月23日現在の物件数
自治体 | 物件数 | 扱い種類 |
桐生市 | 152 | 売買・賃貸 戸建・土地 |
みなかみ町 | 33 | 売買・賃貸 戸建・土地 |
安中市 | 27 | 売買・賃貸 戸建 |
南木村 | 22 | 売買・賃貸 戸建 |
片品村 | 14 | 売買・賃貸 戸建・アパート |
渋川市 | 9 | 売買・賃貸 戸建 |
下仁田町 | 6 | 売買・賃貸 戸建 |
甘楽町 | 4 | 売買・賃貸 戸建 |
神流町 | 4 | 売買 戸建 |
長野原町 | 4 | 売買・賃貸 戸建 |
伊勢崎市 | 3 | 売買・賃貸 戸建 |
館林市 | 3 | 売買・賃貸 戸建 |
みどり市 | 2 | 売買・賃貸 戸建 |
藤岡町 | 1 | 売買 戸建 |
吉岡町 | 0 | |
玉村町 | 0 | |
高山村 | 0 | |
昭和村 | 0 | |
中之条町 | 0 | |
富岡市 | 0 | |
明和町 | 0 |
※自治体名をクリックすると各自治体の空き家バンクへリンクします。
群馬県内の他の市町村にくらべ桐生市の物件数は群を抜いています。高齢化がすすんでいるのが主な原因と思われますが私の仮説はかつては裕福な地域だったため金銭的に売却や賃貸を積極的に行う必要がなく放置していた物件が多いのではないでしょうか。今の不動産サイトに掲載できないような古い物件も多く、買主あるいは借主にリスクを承知の上で成約するものが多数みうけられます。また土地の掲載がされているのも特徴と思います。
空き家・空き地バンクの農地付き空き家
先日(2020年8月18日)の報道で下記のようなものがありました
農地付き空き家”移住者に 群馬・桐生
群馬テレビ
群馬県桐生市では、家庭菜園など農業に興味を持つ移住希望者を呼び込もうと「空き家・空き地バンク」に登録された農地付きの空き家について取得の下限面積を引き下げることにしました。桐生市の荒木市長は、「空き家と農地をセットで売却することが可能になる。既存の制度を併せて活用してほしい」と話しています。
田舎暮らしをする方にとっては農地・農業は興味ある人は多いはずです。私もそうですがなんとなく興味はあっても具体的にどうすればよいのかがわからないと思います。上記の報道がピンときませんでしたのであらためて調べてみました。
農地取得 下限面積とは?
まず農地は誰でも購入したり借りたりすることができません。農地法という法律によって定められていて個人で購入する場合の要件は下記の通りです。
1.農地のすべてを効率的に農業経営すること
2.農作業に常時従事すること
3.一定の面積を経営すること
4.周辺の農地利用に悪影響がないこと
これが農地法3条許可の要件になり、「3.一定の面積を経営すること」が下限面積の要件になります。通常桐生市の場合は30a(新里地区は50a)以上であることを要求されます。これを満たしたうえで農業委員会の許可を得るのが農地取得の流れとなります。※1a=100㎡=30.25坪
つまり3.の下限面積が30a(わかりやすく907.25坪)の土地を耕作する必要があるわけですが移住したての農業初心者にはかなりハードルが高い条件となります。まず手作業で耕作できる面積ではありません。桐生市新里地区の家庭菜園「新里町ふれあい農園」の1区画が18坪なので下限面積が1a(30.25坪)であれば個人でも耕せる面積と思います。
空き家バンクに登録された農地付き空き家はその特例として下限面積の特例を受けられるということがこのニュースの趣旨となっています。
購入あるいは賃貸する土地で農業を行う場合、下限面積が小さい場合も農業委員会の許可がいるのかということになりますが
購入あるいは住宅(空き家)の敷地に付随する土地について、作物の栽培が行われている土地がごく小面積であり、住宅(空き家)の敷地から独立して取引の対象となり得ると認められないものについては、農地法第2条第1項の「農地」には該当しません。
国土交通省 土地・建設産業局 「農地付き空き家」の手引書
となっています。物件によって要件は変わるようです。この 国土交通省 土地・建設産業局 「農地付き空き家」の手引書 は参考になりますので一読するとよいでしょう。
桐生市の移住・住宅に関わる補助金
桐生市の移住・住宅に関わる補助金・助成金は大きく5つに分類されます。
1.きりゅう暮らし応援事業(住宅取得応援助成)補助金
2.きりゅう暮らし応援事業(住宅リフォーム助成)補助金
3.きりゅう暮らし応援事業(空き家利活用助成)補助金
4.桐生市移住支援補助金
5.きりゅう暮らし応援事業(空き家除却助成)補助金
5.は空き家を解体する際の補助金。2.は住宅のリフォームなのでこれから桐生市に移住しようといかたは1および3~5が対象になります。感触としては非常に使いずらい補助金です。補助金があるから移住しようではなく、移住したら申請対象なので申請しておこうという感じです。理由としては補助金の要件が狭すぎて選択の幅が極端になくなってしまうところにあります。
移住をする側の視点でこの補助金をみると、たとえばきりゅう暮らし応援事業(住宅リフォーム助成)補助金は住宅購入あるいはリフォームで最大200万とありますがこの加算補助コンボはかなり難しいでしょう。購入金額と比較すると制限を受けるほどの補助金にはならないのではないでしょうか?
3のきりゅう暮らし応援事業(空き家利活用助成)補助金は賃貸する場合も対象です。私も検討しましたが現実的に賃貸する場合に借主がリフォームを行うこと自体が異例ですし、なにより時間がない場合にはあてにできません。また最大のネックは桐生市内の施工業者であることになっているため桐生市外の方は業者を探すことは難しいのではないでしょうか?
もっとも期待できるのが4の桐生市移住支援補助金ですが東京圏の方が対象となぜか限定的になっています。個人的には4.の対象者を広げて(例えば市外からとする)補助金の額を現在の世帯100万(単身60万)から引越し代金程度(10~15万)に減額。そして他の補助金を増額するほうが桐生市への移住がもっと増えるのではないでしょうか。
空き家バンクからみた移住のまとめ
桐生の空き家バンクは物件数が多いので選択の幅は大きい。不動産サイトでいろいろと物件をみることに飽きない人にとっては面白いと思います。ただ他の市町村もそうですが見やすいサイトにはなっていません。検索や条件絞りこみなど単純な機能がないものがほとんどです。自治体によるのかもしれませんが情報自体も不明瞭なものがあります。値段もフェラーリのように応相談があり、いくらぐらいか土地勘がなく相場がわからない人にとってはかえって不親切でしょう。ただ掲載されている会社に連絡をすると「売主さんは○○万円を希望していますが△△万円ぐらいまで交渉できると思いますよ」程度の話しはしていただけます。
物件の程度、情報の不足を不備と考えるより「だから安く売られている」と思えばチャンスです。ただ物件の程度は千差万別なので内見は必須でしょう。こうしたことを苦労と思わず楽しめる方にとっては桐生市の空き家バンクはおススメです。