小学館入門百科シリーズ 3 つり入門
かつて小学館からこども向けに入門百科というシリーズがありました。ネットなんてない時代は大人も子供も書籍で情報を得るのが一般的でしたので行ったことがない場所や釣ったことのない魚のページをみては妄想を膨らましておりました。幸い我が家には引越しの戦火をまぬがれた小学館入門百科シリーズのつり関連6冊が手元にありましたので折をみて紹介していこうと思います。
小学館入門百科シリーズとは?
小学館入門百科シリーズぐらいWikipediaにあるかと思ったら情報がまったくなく、ネット検索しても古本がHITするばかり。簡単にいえば小学館が刊行した児童向け叢書とでもいえばいいのでしょうか。似たようなジャンルに学研まんがひみつシリーズ、学研ジュニアチャンピオンコース、小学館ひみつシリーズ、ケイブン社コロタン文庫シリーズ、立風書房ジャガーバックスなどがあり、昭和時代に幼少期を過ごした人たちのバイブルだったと思います。いずれも子供向けの趣味、知識、サブカル情報などを網羅していてシリーズ後半になるにつれテーマがかなり細分化していく流れは共通でしょうか?
そんなジャンルの中でも小学館入門百科シリーズは極めて優等生的なつくりでテーマも書面づくりも王道といった印象です。本を買うのはこども本人ではなく親御さんであることを意識してこれなら買ってあげてもいいかなと思わせる戦略だったのでしょう。
第1弾の「野球入門・基礎編」初版発行が昭和45年(1970年)、「つり入門」も同年初版発行。おそらく子供が興味をもつテーマが最初にきますので釣りが第3弾というのは当時の釣り人気がうかがえます。
冒頭に「ある小学校の6年生の男の子23人に「釣りをやっている人は?」とたずねたところ、23人のうち21人までが「つりが大好きで、いつもやっている。」と答えた、(以下略)」とあります。野球と釣りは鉄板、やったことがないほうがまれな時代だったんですね。
小学館入門百科シリーズ 3 つり入門 奥付
私のもっているものの奥付は
昭和45年10月20日 初版1刷発行(1970年)
昭和52年7月25日 2版1刷発行(1977年)
構成者 早川淳之助
発行所 小学館
となっています。表紙の絵はあきらかに矢口高雄氏で釣りキチ三平ブームの影響がみてとれます。また表紙には奥付にはない3名の著者が書かれていています。
- 千葉春雄(ちばはるお)
- 早川淳之助(はやかわじゅんのすけ)
- 巻幡成人(まきはたしげと)
のお三方。子供のころは著者なんて一切気にしていませんでしたので正直どういう方なのかは今もよくわかりません。早川氏のみダイワヤングフィッシングクラブ技術指導担当とありますので釣具メーカーとのかかわりから構成者に代表的な扱いになっているのかもしれません。
今でこそ釣具はダイワとシマノの2大巨頭ですがシマノの釣具参入はこの本がでる1970年参入。ダイワは1955年に輸出リールから始まりましたので当時は釣具といえばダイワという時代ですから多少の忖度が働いたのかもしれません。
構成
目次をみれば一目瞭然ですが釣りをはじめる前段階で約三分の一を占めています。いきなりテクニックを教えるのではなく釣りの全体像をイメージさせてから釣具やマナーなどが書かれています。今であれば初心者は管釣りで必要なタックル紹介、ルアーの巻き方などからエントリーしてしまうのとは対照的にじっくりと時間をかけてレクチャーしてくれます。今の動画でこんな構成にしたら間違いなくスキップされてしまうことでしょう。
当時は「本になっていることは正しいこと」という書籍信奉もありましたのでおいそれと変なことはかけません。なので書籍になるとUFO・超能力・妖怪などはうさんくさいと感じながらも信じてしまうという魔力が当時の本にはあったのです。
フナにはじまり、フナに終わる
釣りはフナにはじまり、フナに終わるという格言がありました。よって入門の最初はだいたいフナ釣りになっています。いきなりリールでの釣りには絶対にしません。初めからリールで釣っていいのはお金持ちのスネ夫くんぐらいなものです。フナはだいたいどの川や沼にいましたので始めやすかったんですね。今だと管釣りか防波堤になるんでしょうか?
写真を撮るということはありませんので記録は剥製か魚拓のいずれか。剥製はハードルが高いので魚拓が一般的。簡単そうにみえて意外と奥が深いのが魚拓。おそらくこれをみて失敗した子供の数はしれないことでしょう。
そういえば釣りキチ三平くんの中でも釣り上げた後に魚拓をとってリリースという話しがありますがそんなことは可能なんでしょうかね?
さいごに
あらためて本を見て気が付いたのですがこの本には特定のメーカーや製品がほとんどかかれていません。あとは釣具屋に行って選びなさいというスタンス。この点も今の釣り入門と違う点かもしれません。そんな中でも唯一の例外はルアー。
海外製の製品についてはオープンなのかもうメーカー名なのかルアー名なのかよくわからない感じ。アブはトビーとかハイローとかルアー名なのに対してラパラのプラグは「ラパラ」で紹介されてます。カウントダウンなんでしょうけど。
挿絵のトラウト(ブラウン?)をスピナーで釣っているのもしびれます。
補足
小学館入門百科シリーズ 81 川つり入門 へつづく